プロローグ

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「若い人って、どのくらい若い人のこと?」 「出版社の人からは、できれば中学生ぐらいから読めるような本をって、言われてるみたい」 「じゃあ、もう近くないよ、私たちだって」 「そうかな」 「もう、オバさんだよ、私たち」 「オバさんて……私、まだ結婚もしてないのに」 「じゃあ、結婚して子供がいる私はオバさんで、結婚してない亜美は、オバさんじゃないってこと?」 「そういう意味じゃないけど」 「じゃあ、どういう意味?」 「近ごろ、ひがみっぽいでしょう? 月渚」  そこで声をかけてきたのはノエルさん……月渚のママだ。 「何よ、ひがみっぽいって」  抗議して月渚が言う。 「子供かかえてると、なかなか自由な時間を持てないから、うらやましいのよね、亜美ちゃんのことが」 「え? そうなの?」  私がちょっと驚いた感じにそう言うと、月渚は子供みたいな顔になって、こう言った。 「うらやましいけど、ひがんでないもん」 「うらやましいのは、私のほうだよ」 「そっか、じゃあ、おんなじだね」 「うん、おんなじ」 「何、その幼稚な会話」  あきれたようにノエルさんが言った。
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