春雷のあとさき

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 自分を包む腕がやさしく頭を撫でてゆく感覚に、ずっとあれこれ考えて構えていた心がほどけて、少し背の低い類の頭に頬を擦り寄せた。日に焼けて、筋肉の付いた身体が密を受け止める。抱き返そうと腕を回すと頬にやさしく唇が当たり、密は身を起こした。 「本当に類?」  ずっと連絡を貰えなかった事、メールが来た後もどこにいるかなかなか教えてくれなかった事を聞こうと思っていたのに、思いがけないことをされて密は目を丸くした。 「そうだよ。来てくれて、ありがとう」  悪戯っぽく微笑んで顔をまじまじと見つめると、密がくしゃっと表情を崩した。目の端から涙がこぼれた。 「ばっか…もっと早くに連絡くれよ…」  焦って密の頬を包んだ類の手に熱い涙が伝わってゆく。ちらちらと横目で見て去って行く到着客の波が過ぎると、涙をぬぐう密に類の顔が近づいて唇が重なった。驚いて固まった密を、類は遠慮なく見詰め続けている。  旅行客のまばらなロビーで二人を気に留める人はいなかった。 「メール、遅くなってごめん。本当は連絡を取らない方がいいんじゃないかと…迷ってた」 「どうして…?来てって言っただろ」     
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