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「よくここまでたどり着いたね、勇者」
玉座で足を組んでいる真っ赤な瞳をした少女は、赤と青が混ざった色の長髪を軽くはらって話し始めた。
「僕の元まで来れるとは思っていなかったよ」
俺達はこの悪を滅ぼすために必死に経験を積み、レベルを上げてきた。
「レベル99なんてすごいじゃないか!」
何を言っているのかはわからない。頭の中は目の前の悪に対する憎悪で満ちていた。
「まぁでも、ちょっと遅すぎたよね」
それが何かを発する度に、頭の中の黒が膨張していくのを感じた。
「君が城に来る前、3人の冒険者が遊びに来たんだよ。ほらこれ、見覚えないかなぁ?」
玉座の後ろから3つの頭部を取り出した。それは紛れも無く元パーティメンバーの物だった。
その瞬間、黒が溢れ出した。
アレハココデ殺ス
何万回と繰り返した素振りも、少しでも早く唱えられるように練習した詠唱も、反復した攻撃パターンも全てが頭から、身体から消えていた。
ウサギを狩るトラの様に、ただ直線的に飛び付いた。
「身の程をわきまえなよ」
瞬間、飛び付いた勢いはそのままに身体の自由が奪われた。
こんな魔法は見た事も聞いた事も無い。
玉座の前に平伏す形になった俺は必死に筋肉を働かせようとするが、どうにもならない。
終わりを悟った。
「最後に教えてあげるね」
憎い。面白半分で人を殺すそれも、自分の非力さも。
「僕のレベルは999なんだよ」
こんな馬鹿な世界を作った神すらも。
ただただ全てが憎いと思った。
「じゃあ、またね」
そこで意識は途絶えた。
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