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「……しゃよ……勇者よ!!」
地鳴りのような低く轟く声に驚き、ハッと目を覚ました。
目に移る天井には高価そうなシャンデリアが吊るされていた。ここは…?
「気がついたか、勇者よ。」
眠りを妨げた不快な声の持ち主が喋りだした。
しかし勇者とは俺の事を言っているのだろうか。
身に覚えの無い呼び名にとまどいながらも身体を起こすと、そこには立派な白鬚を蓄えた老人とその側近と思われる風貌の若い男が2人いた。
「お前は魔王を討伐するためにここに召喚されたのだ。力を身につけ、魔王を討伐し、世界を救うのだ。」
「これをくれてやる。武具屋に寄って身仕度を整えるといい。」
側近がそう言うとウォッホンと偉そうな咳払いをしてから老人が言った
「さあ勇者よ。冒険の始まりだ。」
…意味がわからない。
勝手に呼び出して一方的に要件を言ってさあ行ってこい。俺は今、身を以て理不尽を経験した。
側近に連れられ、長い階段を下りて城の外に出された。辺りには20軒ほどの家屋が点在している。とりあえず、あの側近が言っていたように武具屋に行こう。
適当に家屋を見ながら歩いていると、家屋の陰から少女が走って飛び出してきて、ぶつかった。
「ごめんね!前見るの忘れてたよ!でも君も私に気付かなかったから、おあいこってことにしといて!」
15歳ぐらいの少女はからからと笑いながらそう言った
「初めて見るけど、最近この街に来たの?名前は??」
「…加賀朝日」
覚えていたのはそれだけだった。頭の中には他の一切の記憶が存在しないことに気づいた。
「カガアサヒ?変な名前だね!まぁいいや、急いでるから、またね!」
少女は走り去って行った。
記憶は無いはずなのに、なぜかあの少女に見覚えがある事に別れ際気づいた。どこかで会った事があるのだろうか。
その後真っ直ぐ歩いていると武具屋に着いた。
「いらっしゃい!いいもの揃ってるよ!」
豊富とは言えないが、無いよりはマシであろう武器と防具が飾られていた。
剣を手に取りその場で軽く素振りをしてみると、異様にしっくり来るのでその場で購入を決め、店主に渡した。
「はがねのつるぎだね!3,600Gだよ!」
貨幣の価値が分からないので、先程側近に渡された金を全部出してみた。
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