罪深き者の不安

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「そんなに慌てなさるから・・ほら口直しなさい。」 一瞬、研次は嵌められたかと険しい表情を浮かべて老人を見たが、彼は穏やかな表情を全く変えずに酒を勧める。そこには人を貶めようとする気配など微塵もない。 研次は用心深く杯(さかずき)の水面近くまで鼻を持ってゆき、臭いを確かめるがそれには不審な点どころか値段の張る中華料理店の記憶が甦ってきそうな高級な老酒の香りしかない。 『・・そういえば同じ甕に入ったものを爺は飲んでいるじゃないか。』 瞬時にそれを分析した研次はトラウマになりそうな食べ物の余韻を早く消し去りたい気持ちと芳醇な酒の香りにたまらなくなり、一気にそれを呷(あお)った。
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