罪深き者の不安

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『!?』 口中では芳醇な香りだったはずの酒が食道を通過しないうちに全く異質なものへと変化し、研次はその場で咽(むせ)てそれを吐き出し、のたうち回った。 劇物が腹中に染み渡るとこんな感じだろうか。 喉と腹の中全体が焼けるように熱く、それに加えて研次の嗅覚は現世では味わったことのない、渋味と苦味の極みから作られたような異臭に支配された。 本能的にもがきながらも嘔吐するが体内に入り込んだものは排除できるどころか呼吸すら満足に許さない。 心配して駆け寄り、背中を擦(さす)ろうとする老人の手を払いのけ、研次は呼吸を整えにかかる。
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