罪深き者の不安

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左右に篝火が並ぶ石畳の先に重厚な屋根とそれを支える柱で築かれた、立派な門が見える。 縄などで自由を奪われることはなかったが、研次は官吏の前を歩かされている。 逃げることも頭に過(よぎ)ったが後ろの男はどう推測しても警官のような者にちがいなく、再度捕まればどんな目に遭うか分からない。更にはこの世界の勝手も土地勘もなく、それは諦めざるをえなかった。 せめて官吏に何か話しかけて緊張を和らげたいが背中に感じる威圧感はそれを許しそうになく、真っ直ぐ歩けという指示の後は彼も口を開かない。 カウンセリングとはおそらく柔らかい表現を使用しただけで自分はこれからどこかで裁かれるのだろう。 現世での自分の罪を知る研次は閻魔大王のような存在に詰問される妄想しかできず、もう気が気ではなかった。
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