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「名前は二見公人(ふたみきみと)。高間大学生物学部の二年生です。住所その他、わたしが知っていることはあらかじめ資料にまとめてきました。そんなに多くはないですけれど」
といって、二人の様子をうかがったところで、思わず硬直した。
加島が険しい表情で写真の男子学生を睨みつけていた。
悲鳴をあげそうになったところで、マリアが「あー、ごめんごめん」と立ち上がり、横から加島の口にピザを突っ込んだ。
「もごっ!?」
呼吸が確保できず慌てる加島に、マリアが「しょーがないなー」とペットボトルのお茶を渡す。
「いきなりだけどこいつ、中本ちゃんみたいな子がタイプなんだよね」
「……はい?」
「だけど彼氏がいるってんで、嫉妬してたんだよ」
「はい???」
困惑が解けない。すると、マリアはわかりやすく一言で言い表す。
「そいつ、女だけど女にしか興味ないんだよね」
加島を見ると、目を白黒させながらピザを呑みこむと一言。
「……悪いか?」
と言って耳まで真っ赤になった。
マジでか?
「へ、へぇー、光栄です」
とお茶を濁したものの……今の反応は、どう受ければいいんだ?
本当にこの人は……
色々と想定していたプランが一気に崩壊した瞬間だった。
予想外の事態に思案しているのを見抜かれたのか、マリアは、
「大丈夫、不倫調査は慣れているよ。“アフターフォロー”までね」と胸を張った。
「……不倫調査?」
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