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「なんとか依頼をとりつけることができたね」
窓から駅へと向かって行く中本を見送りながらマリアは胸をなでおろした。
そして窓に張り付いている緩みきった加島の顔を見て「うわ気持ち悪っ」と眉間に皺を寄せた。
加島は窓の反射した自分の顔を見て咳払いを一つ、
「お前のおかげで逃げられそうになったがな」
それをあはは、とやり過ごすマリアだったが、すぐに反撃の材料を思い出した。
「でも、涼ちんだって危なかったじゃん。あの写真を見たとき」
「……あれは完全に失態だったな」
「ちょうどあの子があんたの好みでよかったね」
「幸か不幸か、な」
加島は窓から離れ、デスク上のノートPCを操作する。
そして、目的の資料を見つけると、マリアにも見えるように画面を動かす。
「まさか一月前に依頼を受けたばかりの人物を、また調査するように依頼がくるなんてよ」
「うちの依頼で単純に素行調査だけなんて、珍しいもんね」
画面には、中本が提示した資料写真に映っていた男子学生を映した写真が表示されていた。
「恋人がいないのは知ってたけどな。あれで誤魔化せてよかった」
「……そうかな?」
マリアの不敵な笑みに加島は眉をひそめる。
「なにか?」
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