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「いや、ワタシたちって“職業柄”少なからず恨みを買うじゃん?」
「……あの子の依頼が罠だとでも?」
「もー、そんな怖い顔しないでよ。あの子がなにか隠してるのはさすがにわかったでしょ? それがなんなのか興味出てこない?」
「……この仕事、私情で動くと足元すくわれるぞ」
「えーマジで……それ、あんただけには言われたくないわー」
ぶーたれるマリアを横目に、
「あ、そういえば」
加島がしまった、とこめかみを掻いた。
「依頼の着手金。もらうの忘れていたな」
「……わざと?」
「素だ」
そう言いながら、加島は軽やかにスマホのダイアルボタンを押す。
「もう番号覚えてるし」
マリアがあきれたように言った。
ドアの鍵を開け、帰宅すると思わず大きなため息がついて出た。
思っていた以上に緊張していたようで、足はがくがくだった。
まだ早いけど、一回風呂に入ろう。
平日昼間の風呂の甘美さと謎の背徳感に文字通り浸りながらスマホを見ると、いくつか着信履歴があった。その中に、未登録の番号が一件。
調べると、加島探偵事務所のものだった。
風呂上がり、軽く息をついてかけ直すと、ワンコールで加島が出た。
『お世話になってます。加島探偵事務所の加島です』
電話越しだと結構ちゃんとしているんだな。
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