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それらの封筒をためつすがめつしながら、加島探偵事務所の二人の心証を改めて思い起こす。
常人ならざる殺気を放つがなぜか気に入れられた加島と、笑顔の向こう側が見えないマリア。だが、あの一瞬見せた反応は――
もしかしたら、“当たり”なのかもしれない。
あの二人に依頼できたことに関しては、この容姿に感謝するべき……なのだろうか?
ため息をつきながら封筒を卓上に投げ、引き出しと反対側の壁を見る。
一面に貼られているのは、ここ一週間で撮りためた男子学生、二見公人の写真。
朝起きて家を出るところから、大学へ行き講義を受け、夕方に帰ってくるまでの日常風景。彼が学友と談笑しているところから、夜のバーで女性をナンパし、そのままホテルに入って行くところまで。
そして、なにより彼が不在の間の家の中の隅々の様子まで。
だがそれでも、ここまでしても望む情報は得られなかった。
二人への依頼が、吉と出るか凶と出るか。
「頼りにしてますよ」
あなたたちが“頼みの綱”なんですから。
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