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第二章
電話口で聞く中年の探偵の声は、受話器越しにタバコの臭いが漂ってきそうなくらいしゃがれていた。ときおり絡む痰が聞いていてイライラする。
『お嬢ちゃん、一般的に、探偵の仕事ってのは、不倫調査や知人の行方調査が大半だ。その点において加島の連中も根本的には変わらない。だが、“ただの”人探しや素行調査をやつらに依頼する客はいねぇ。客の目的はやつらのおとり捜査から拷問まがいの非合法な“聞き取り調査”、証拠不十分で逮捕・起訴ができないような人間への代理制裁だ。つまり、探偵界隈の腫れ物だよ、あいつらは』
それが加島たちの調査を依頼した中年の探偵の所感だった。
『加島の経歴なんてのは有名すぎてな。調査料金をもらうのが申し訳ないくらいだ』
たしかにネットを調べると、彼女についてはあふれんばかりの情報が出てきた。
中学高校と剣道の全国大会に出場、六年間優勝し続けたという栄光ある過去。
だが、それを差し置いて検索トップに現れるのが、
【凶悪】剣道国体優勝者加島涼の暴行事件について語るスレpart.1【犯罪者】
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