探偵テルツェット

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 まるで近くのコンビニに買出しにでもきたような出で立ちの彼女だが、その眼は冷たく、男の背筋を凍らせた。  彼女は有無を言わせず男のネクタイを掴み地面に引きずり倒した。 「ま、待ってくれ。これは合意で――」 「あ?」  女性は抵抗する男の顔面に右腕を振り抜いた。  鈍く肉を打つ音が何度も女子トイレの中で反響する。 「ちょ、待った待った待った!」  ガムテープを外した女子高生が止めに入るまで、女は黙って殴り続けた。 「やり過ぎ!」  少女がたしなめるように言う。  自分が襲っていた女が彼を庇うように立っていることに、男は驚いたが、 「ほうだ……これは……こんな暴力、許されうはずはない」 まだ話す気力があったか、と長身の女性は息をついた。そして、こぶしをさらに振り上げるが、少女が女に組み付いて止める。いつの間には手錠は外れていた。  男はそれに気づかず、にやりと口角を吊り上げる。 「ありがとう、君! やっぱり君も僕に抱かれて愉しんでいたんだね! だったらこれは合意の上で――」 「冗談」  少女は一笑した。  その視線は男の股間に向かっていた。 「自信過剰。“自分自身”をわきまえてよ」  男は茫然とした。  そこに、一台の車がやってきて、数人の警官姿の男たちが降りてくる。  彼らは一直線に女子トイレにやってきて、男を取り囲んだ。     
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