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「こいつが……」
男たちの視線は殺気立っていた。
囲まれた本人は展開についていけず、呆けたように男たちを見上げる。
「あんたらは?」
「「「………………」」」
男たちはそれぞれその張り詰めた表情には似つかわしくないリボンや女性もののハンカチをきつく握り締めていた。
「依頼のお探し物はこちらで間違いないですかねー?」
少女はかばんから取り出した書類を渡しながら、緊張感のない声で訊いた。
「……ええ、間違いないですね。あとはこちらで」
順番に書類に目を通した彼らは男に手錠をかけ、車に押し込んだ。
ここまできてようやく男は自分がこの華奢な少女と長身の女にはめられたことに気がついた。
(この二人はグルで、男たちの依頼で僕を……だとすると――)
そして、男たちの殺気からこの後の展開を想像し、身震いした。
「ありがとうございます」
最後に深く一礼した男たちに少女はズバッと、
「いや、お礼とかそういうのいいから。お代お代」
「は、はあ……」
くたびれた風貌の男がぶ厚い封筒を差し出す。
長身の女がそれを受け取りながら言った。
「感謝されるような仕事じゃないんで」
そして男たちを乗せドアは閉まり、車はそのまま走り去った。
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