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硬直した声帯をなんとか駆使した一言に男は、
「おすすめしないぜ」
それだけ言って去っていく。
その言葉の意味を図りかね、考えながらも階段を上がる。
階段自体もそうだが段の幅が狭い。
スニーカーを履いてきて正解だった。
なれないピンヒールでも履いて来ようものなら、きっと踏み外してけがをしていただろう。
ようやく三階にたどり着くと、一つだけあるドアをノックした。
「――……」
中から反応があったような気がしたので、ドアノブに手をかけた。
「こんにちは――」
そういって、中の様子を目にした瞬間、思考のすべてがフリーズした。
「はっ……ん……んんっ!」
戸を開けた途端に目に入ってきたのは、ソファの上で上下に身体を揺らす小柄の女の子。
よく見ると彼女の下には男が恍惚の表情を浮かべている。
「………………は?」
思わず間抜けな声が自分の口から漏れていた。
いやいや、いやいやいや!
なにをやって……えっと、なにをやっているのかはわかるけれど、なんでこんなところで?
すると、こちらのあげた声に気が付いた少女と目が合ってしまった。
縦横無尽に揺れるセミロングの茶髪の下からのぞいたのは、吸い込まれるような青い瞳。
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