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少女はあれ、と首をかしげた。
「ってか、誰?」
「依頼人。買出しの間、ちゃんと待ってるように言ったはずだけど?」
女性は窓を開け、換気しつつ窓際の席に腰を下ろした。
「あ、ごめん、忘れてた」
「お前……」
大きな舌打ちとともに女性の顔つきが険しくなる。
「だってだって! 朝から微妙に欲求不満になるようなことさせるから!」
地面に投げ捨てられていた男の服は有名なピザ宅配チェーンの制服だった。
見ると、入口横の棚に中からの湿気でしなしなになったピザの箱が置いてあった。
「ごめんねー中途半端で」
少女はいそいそと服を着る配達員に謝ったが、「いっすいっす」と男は悟りをなんだか満ち足りた表情で小さく頷いた。
「あっ、お代は?」
「いっす」
そう言って、配達員は横をそそくさと通って行った。彼の後をおうようにしてぱたぱたと駆けてきた少女は「ごちそうさまー」とピザを手に彼を見送った。
どっちの意味で? とか考えた時点で負けだと悟った。
「おいマリア! そんな格好で外出るなよ」
加島に諫められた少女、マリアはいけない、と戸を閉めようとした。
そこで反射的に扉に手をかけていた。
「えっと、じゃあわたしも今日のところはこれで」
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