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【クラウル編】覚えが無い…
何がどうして、こうなった…?
クラウルは一人、覚えのない宿のベッドの上で自問自答を繰り返している。
寒い季節、室内も冷たい空気を纏う中、クラウルは隣に寝る見覚えのある若い男を見下ろしている。
新年の翌日にしてはあまりにショッキングな事だ。
確か、協力者や親類の家を回って挨拶をして、そこそこで料理と酒を多目に振る舞われていた。
毎年の事だが、今年は少し前に嫌な案件も抱えたことから多少羽目を外した。
確か最後は、ルシオの所だったはずだ。アネットという若い女性を口説き落としているというあいつと、二時間は話して酒を飲み、昔のように楽しい時間を過ごした。
そうだ、そこで深酒をしたんだ。
だが、どれだけ記憶を漁ってもそこから先が思い出せない。どうして隣で眠る彼に行き着いたのか、その過程が完全に抜けている。
頭を抱えて更に考えていると、不意に隣の男が身じろいだ。
記憶が確かなら、ランバートの友人で二年目のゼロスという隊員だ。
薄い茶色の髪に、精悍な顔立ちをしている。体格もよく、引き締まった腕の盛り上がりや割れた腹筋はそのまま彫刻にしても見劣りはしないだろう。
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