【クラウル編】覚えが無い…

2/5
504人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
 だが何が問題かと言えば、隣のゼロスが一糸まとわぬ姿なのだ。そしてなぜかクラウルも裸だ。  これは…もしかしなくても何かしら…やらかしたのか?  再び自問自答だが、当然酒に酔っての記憶など残っていない。普段こんな失態などしたことがないクラウルは大いに焦っていた。 「ん…」  緩く発せられた声のあと、身じろいだゼロスは緩く瞳をあける。髪と同じ薄茶色の瞳がクラウルを見上げ、フッと笑みを浮かべた。 「おはようございます」 「あぁ、おはよう」  ごく普通の、何事もないかのような挨拶が逆に気になる。戸惑うクラウルの横でゼロスは起き上がり、平然と水差しから水を注いで飲み込んだ。 「その様子では、昨夜の事は覚えていませんね」 「え?」 「まぁ、仕方がありませんよ。随分とお酒を飲まれていたようですから」 「……ぁ」  この言いようだと、絶対に何かをしたはずだ。そもそもそうで無ければこの状況は生まれないはずだ。  思いだして、もう少し先まで覚えていた。  ルシオは泊まっていけと言ったんだ。だがクラウルは事実婚とはいえ新婚の雰囲気のあるルシオの家に泊まる事を断ったんだ。  そうして、街まで降りたのは覚えている。そこから先だ、何かあったのは…。     
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!