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見れば、ゼロスはニヤリと男臭い笑みを浮かべる。その印象は以前とはまったく違うものだ。
ランバートの側にいるときのこいつはとても真面目で友人思いな隊員に見える。
だが今はどこか男臭く、誘い込む様な雰囲気まで漂わせてクラウルの反応を見ている。いっそ似ている別人かとも思えて、クラウルは問いかけた。
「ゼロス…だよな?」
戸惑いながら問いかけると、ゼロスは僅かに目を見開き、次にはスッと細くする。
明らかに機嫌が悪い。そういう態度を隠さない事にも驚いた。あまり感情の起伏が激しいようには見えなかったからだ。
「いや、すまない! 何か、印象が違ったもので…」
慌てて弁明すれば、次には薄い笑みが返ってくる。どこか見下すような、蔑むような様子まで滲むその視線が、クラウルを更に混乱させた。
「ゼロス?」
「なんでしょうか、クラウル様」
「あの、俺は昨日…」
「お気になさらず。酒に酔っての事をあれこれと騒ぎ立てるほど、器の小さな男ではありません。それに、貴方のお立場も分かっているつもりですので」
「あぁ、いや!」
これは絶対に何かしたんだ。思ったクラウルは慌てて弁明をしようとした。だが、出来る材料がない。
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