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上念は、顔写真脇に記された最終学歴の箇所を何度も指でなぞった。
高学歴の人間達は、東京事象の成果を目の当たりにし、尚且つ『東京サイケデリック・クリエイターズ』のマインドコントロールによって、完全に洗脳され、選抜攻撃隊へ志願し兵士になった。
第1の作戦は、国民に向けての心理攻撃。
極限武装中立国『東京国』が、いかに本気であるかを実証する必要性を、声高らかに推奨したのは上念だった。
だが、彼自身は命をかける気など毛頭なく、選攻が成功した暁には『東京国・財政・通貨発行権経済局大臣』の席が約束されていた。
新国家建国という途方も無い野望の実現が、手の先をかすめている。
どうしても掴みたい地位と名誉を目前に、上念は人間の心を棄てた。
間も無く、日本国際テレビ局へ向けて攻撃命令が下されようとしている。
人が消滅する瞬間を生中継させ、鉄壁なシールド・白いオーロラの威力を内外にアピールする目的は、主に中東諸国や独立運動家へ向けての軍事ショーの意味合いが強かった。
これがビジネスなのだと上念は思いほくそ笑んだ。
LEDライトに照らされた顔が、若干若返った気がする。
上念は、死にゆく戦士達の最終学歴を眺めて笑った。
クククククククと、堪え切れない衝動が襲う。
勝ったのだ。
高学歴の人間達を、操る側に立てた興奮がどっと押し寄せる。
震えが止まらないでいた。
勝ち組なのだ。
運命に忠実だった、虚構まみれの男の勝利だと上念は確信した。
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