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ー日本上空・高度450km 人工衛星りんねー
長菱形12面体のうち、菱形8面に開放型照射砲を搭載。
平行六変形4面の収縮型支柱先端部分には、ポリイミドフィルム大型太陽帆・薄膜太陽電池ソーラーセイルが搭載され、太陽光圧の力で推進・姿勢制御が可能となる。
開放型照射砲8門には、其々名称が付いており、マーキュリー・ヴィーナス・マーズ・ジュピター・サターン・ユラナスユレイナス・ネプチューン・アース。
各砲門内部には、太陽系に降り注ぐ美津島石由来の、宇宙放射線G・Z・K粒子を蓄積するレッドボックスが内蔵されている。
うち、実用可能な宇宙兵器は、塩基Qと反応する超エネルギー銀河宇宙線G線に限られる。
美津島シールドと呼ばれるオーロラは、地球の大気の影響を受けたG線によるプラズマ現象であり、気温や湿度によって、雨や雪を地表にもたらす事が先の実験『東京事象』により判明していた。
しかし、因果関係には更なる研究が必要不可欠であり『方舟』『りんね』がもたらすヒト・絶滅作用・所謂生命自浄作用については未だに謎が多い。
東京事象と共に消えた研究者の間では、これら全ての軍事施設を総称して。
『未完成なMother』
と、皮肉を込めて呼んでいた。
アース照射砲門外輪から、青白い光の輪が地上へ向けて放射されている。
大気を貫く輪郭は、意志を持った生命体のように縮小を繰り返しながら揺れている。
『美津島シールド域。ディフェンスとの誤差修正。幅55120維持』
『美津島シールド域修正。幅55120維持』
縮小する輪の中に存在するヒトの数は977人になった。
攻撃命令を待ち続ける『りんね』の黒い船体は、太陽光を浴びながら、艶やかな色彩を宇宙空間に放ち続けていた。
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