31人が本棚に入れています
本棚に追加
『あなた方の意見を国民に届けなくてはいけない。しかし、この環境は不公平極まりない。まずは武器を下ろし、相反する意思も聞かなくてはならない。それが公平ではありませんか?』
羽田の言葉に上念は噛みついていた。
『何をいまさらちゃんちゃらおかしなことを!マスコミなんて一方の意見ばかりじゃありませんか!コメディーですよコメディー!どんな力が働いてるか知りませんけどね、政治を大衆迎合化させてきたのはあんたらにだって責任あるでしょう。そもそも、テレビなんてのは凄い世界じゃない!!情報なんてのはあふれ返ってる。本来はね、アナウンサーなんてのも要らないんですよ。所詮ロボットなんでしょう!』
『確かに我々にだって責任はあるかとも思います。ただ、あなた方がやっているのは暴力です。我々も言葉の暴力を使っていると言われたら仕方がない。しかし、有事にあってこそ、テレビの力は必要不可欠だと私は思いました。東京事象の時、私の友人である・・・他局ですが、女性アナウンサーもいなくなりました。大学の後輩です。渋谷ハチ公前からの中継で突然姿が消えた。撮影クルーもです。それが、人為的な攻撃であるならば私は許せない。しかし、ずっと我慢してカメラの前に立ち続けた。それが日本人の正直な姿なのだと感じたからです。大災害の度に、我々はこう思ってきたはずです。こんな時も、働かなくてはならないのかって。それが日本人なんだとずっと思ってきた!あくまで私の意見です。だが今回は違う!これは戦争です!!日本人として私は問いたい。東京国と、日本国の同胞に問いたいのです。それは公平でなくてはならない。それが出来ないのならば、私がここにいる理由はない!!』
羽田は涙声になっていた。
上念は鼻で笑って言った。
『じゃあお帰り下さい。私が送りましょう。スタッフの皆さんもお引き取り下さい。こんな茶番は無意味だ。ただし、放送は続けさせてもらいます。見たくなけりゃ見なきゃいい!それだけの事だ!もう一度言います!!』
立ち上がって叫ぶ上念の声は気迫に満ちていた。
わずかな静寂の後に再び声が響いた。
『日本国民に私は忠告する!これより、東京国国防軍最高長官である幣原喜三郎大将の演説を執り行う。耳を塞ぐ者は塞ぎ、目を閉じる者は閉じるがいい!!それが出来ない者は卑怯者だ!!永遠に闇で吠え続けるがいい!!』
最初のコメントを投稿しよう!