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日本国際テレビ局を出発した護送車は豊洲へ向かっていた。
並走する警察車両は他になく、閑散とした街と、ベイエリアならではの強い海風が街路樹を揺らしていた。
数年前に完成した市場へ向かう車両はなく、地下鉄新駅の入口もシャッターが閉ざされたままになっていた。
テレビ局を取り囲んでいた自衛官や警察官の数が減り始めた頃、護送車は日本国際テレビ局の駐車場へと入って行った。
手錠をかけられた安座間の姿を見て、前線で警戒に当たっていたテロ対策班の隊員達は疑いも持たなかった。
東京国国防軍の親衛隊として名の知れた人物が、警察車両に乗せられている光景を前に、拳を掲げる若い隊員もいた。
スタジオから出て来た野見山と上念は、待機していた数人の警察官に周りを固まれ収容された。
歓喜が沸き上がったのは、車が首都高臨海線を抜けて一般道へ下りた直後だった。
運転席の小島栄も涙を浮かべながら笑っていた。
こんなにスリリングな体験は、不動産売買の交渉以外に経験したことがなく、事業の失敗から自分を救い出してくれた『東京・サイケデリック・クリエイターズ』の代表・上念には特に感謝していたし恩義もあった。
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