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似合わない警察官の制服に、違和感を抱いたまま救出作戦は成功した。
助手席の現役警察官とも握手を交わした。
彼もまた上念を恩人と慕う人物だった。
後部席では、手錠を外す音と共に会話も聞こえて来た。
小島は、ハンドルを握りながら思った。
誰か話しかけてはくれないものかと。
すると、上念がバックミラーに見えた。
『いやあ、小島さんナイスナイス!流石百戦錬磨の強者だね。お見事!』
小島は表情に乏しく、もともと喜怒哀楽を素直に出せる性格ではなかった。
だから、テロ対策班の隊員を目の前にしても臆することなく堂々としていたーそのように他者からは見えていただけの事だった。それは小島自身も理解していた。
手続きが簡単に済んだのは、隣に座る現役警察官のお陰だというのも解っていた。
それ以上に、上念に認められたのが嬉しかった。
小島は勇気を出して言った。
緊張で上ずった声は余計に笑いを誘った。
『え?なになに小島さん、リラックスしてりらーっくす』
上念のおどけた表情は有難かった。
小島は少し大きな声で言った。
『上念さんの事、なんて言われているかご存知ですか?』
『ええ?なんて言われてるの?』
『上念・フィッツジェラルド・海斗、略してJFK。日本のJFKって』
『うまいこと言ってくれるね小島さん!』
車内は笑い声に包まれていた。
上念はまんざらでもない様子で、何度もその言葉を繰り返していた。
『日本のJFK』
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