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「だからもう貴女に頼るしかないのよ。魔女ルルキア」
「えぇ~~」
「えぇ~~って、そもそも貴女が私をこんな姿にしなければ、こんなことには!」
「あぁもう、煩いお姫様だなぁ~」
「なっ!」
聞きたくないと言わんばかりに耳を塞ぐルルキアの態度に、ミシェルカの毛がゆっくりと逆立つ。
「煩いですって?こんな姿にしたのは貴女のくせに、貴女のくせに……」
真っ白な鋭い牙が、荒い息と共に剥き出しになっていく。その姿はまさに、威嚇する狼の様。
ーーマズい。
身の危険を感じたルルキアは、すぐさま呪文を唱えた。
「芽吹く小さな命達よ、彼女の動きを止めよ!」
その瞬間。ルルキアに飛び掛かろうとしたミシェルカの手足を、部屋に飾られていた植物達がツルを伸ばし。きつく巻き付いた。
「グルルルル」
手足を縛られ、身動きが取れなくなってもなお。ミシェルカは牙を剥き出しにしたままルルキアをギロリと睨みつけている。獲物に食らいつこうとする肉食動物のように。
ーーまさか、ここまで獣らしくなってしまうとは。
魔女歴百年目のルルキアも、改めて自分の魔法の強さに感心してしまうほど。ミシェルカはここ数年で人間からかけ離れた存在になってしまっていた。
きっともし、男がミシェルカに言い寄ってきたとしても。あまりの歓喜に思わず食い殺してしまうだろう。
けれど、ルルキアはそれで良かったと思っている。
だってそれこそが、彼女の目的だったのだから。
「あぁもう!いい加減放してよ!」
やっと怒りが静まったのか、いつもの調子でジタバタしてツルを外すようにお願いするミシェルカ。
暴れる度、今度は床がミシミシと音をたてている。
「ちょ、暴れないでください。床が抜けます」
「じゃあ早く私を解放しなさいよ」
「もう襲って来ないならいいですけど?」
「しないわよ!」
「はいはい」
めんどくさそうに相槌をしながら、ルルキアは手をパンッと一回叩く。
すると。ミシェルカの手足に巻き付いていたツルがゆっくりと離れ、蛇のようにシュルシュルと床を這いながら、置かれていた観葉植物へと戻っていった。
ようやく解放された手足を回しながら、ミシェルカはボキボキと関節を鳴らす。
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