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私はあなたを見守る
昔。東にある一番栄えた大きな国に、ミシェルカ姫という傲慢不遜で我が儘な、見た目だけ美人の残念なお姫様がいました。
美しい金色のブロンドヘアに、きめ細やかな白い肌。くりっと大きな目にバイオレットの瞳。
小さくて華奢な身体を包み込むキラキラしたブルーのドレスを着れば、それはもうどこに出ても恥ずかしくない。国民の皆が憧れる美女。
なのに、中身は国民の皆が呆れるほどのブスだった。
とにかく彼女の悪いところは、男遊びが酷い事。
ある時は隣国の王子、またある時は兵士、またある時は執事、そのまたある時は庶民と、身分の差は関係なく。自分の気に入った男はとにかく手を出して。飽きたらすぐに捨てるという行為を繰り返していた。
国を代表するお姫様がそんなふしだらな事ばかりして、いつかきっと罰が当たる。と、ほとんどの民衆が口をそろえて話していた頃。
本当に、その罰が当たってしまった。
「あらら~。なんと卑しいお姫様なんでしょう。どうせなら、見た目も醜い姿に変えてやりましょう」
ある日突然。ミシェルカ姫の目の前に現れたのは、何百年も昔から人間達に恐れられてきた魔女ルルキアだった。
一切歳を取っていない二十歳後半くらいの顔だち。だがその目は、まるで死人の様な色のない瞳で、見つめられているだけで背筋がゾクッと寒くなる。
そんな魔女がミシェルカの目の前で、異様な空気を放つ。
そして急にニヤリと不敵な笑みを浮かべると、長い杖をコツンッと地面に打ち付け。呪文を唱えた。
「地に足を付け、緑に歌え。その肉体よ、自然へ変えれ。其方は獣。屈強なる生き物だ」
そしてもう一度杖を叩くと、緑に光る魔力の渦がミシェルカを包み込み。気が付くと、彼女はまさに獣の様な醜い姿になってしまったのです。
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