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とうとう脚に力が入らなくなってしまったルルキアは、その場で座り込んだまま俯く。
ここで倒れてしまえば、野次馬の目線が私一人に向いてしまう。運が悪ければ、仮面を外される可能性だってある。
そう考えて座り込んだのだが。運悪くも、ルルキアの目の前に一人の影が近寄ってきた。
影の大きさから考えて、ミシェルカではない。
多分男だ。
「大丈夫ですか?」
ーーチッ。善人が。
「あぁ大丈夫っす。なんで気にしないでくださ~い」
わざとらしく失礼な口調で返事を変えるルルキア。
その方がきっと相手も立ち去ってくれると思ったからだ。
しかし、返ってきた言葉は。
「そうですか。なら……ここで不意打ちされても文句言わないでくださいねぇ~!!」
予想だにしなかったものだった。
「ッーー!!」
すぐさま顔を上げたルルキアの頭上から、鋭利なナイフが勢いよく振り下ろされる。
しかし男の異常さに感づいたルルキアは、ギリギリのところでナイフをかわした。
だがそのかわり。ルルキアの顔を隠していた仮面は、ナイフに引っかかってしまい。取れてしまっていた。
「クソッ!」
燕尾服を着た白髪の男性が、これを狙っていたかのようにニヤリと笑って叫ぶ。
「魔女だ!!魔女ルルキアがいるぞ!!皆逃げろ!!」
その声に、全員の視線が一斉にルルキアに向いてしまった。
「魔女だ!」
「きゃあ!!」
「早く逃げろ!!」
会場に居た人間が皆声をそろえて叫んで逃げる中、その波にのまれながらもルルキアの方へ近寄る女性が一人。腕を伸ばしながら、顔を歪めて叫んだ。
「ルルキア!!逃げて!!」
ミシェルカの叫びにルルキアはなんとか立ち上がって、呪文を唱えようとするが。その前に、ナイフが彼女の胸に深々と突き刺さる。
「ヒヒッ!任務完了~」
引き抜かれた所から血が滲み出て、黒のドレスがまるでチョコレートコスモスのような赤黒さへと変わっていく。
その出血量と痛みに気を失ったルルキアは、そのまま後ろへ倒れていくが。その背が地面に叩きつけられる前に、大きな腕が彼女の身体を抱きかかえた。
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