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彼女の手を握って、顔を寄せるミシェルカ。その耳に、か細い声でルルキアは必死に伝える。
「ひ、め。だめです。こいつを、ころ、せば。あなたは、かんぜんに……人では、なくなって、しまう」
「でも!」
「わた、しの、まりょくを、ささげます。ので、じゅもんを」
ルルキアは握られた手を、きゅと握り返した。
「これ……」
不思議な力が流れ込んでいくのを、ミシェルカは確かに感じた。
温かくて、でもどこか物寂しい。今なら一人でなんでも出来てしまいそうな。そんな気分になっていく。
「呪文……」
教えられていないのに、ミシェルカはなんと唱えればいいのかすぐに理解できた。
「そう、呪文は」
二人の帰る場所。ルルキアが作ってくれた城を思い浮かべた瞬間。
黒と紫の光が、ミシェルカ達を包み込んだ。
「この命の育つ地へ、場所へ、風よ。運べ」
そして二人は一瞬にして、その場所から姿を消した。
残っているのは、ルルキアの血痕と。未だナイフをクルクル振り回している白髪の男性だけ。
「あ~あ。折角自我を失った獣と殺し合えると思ったのによ~。あの様子じゃ、あの魔女もまだ生きてるだろうしなぁ~。あ~あ」
会場に散らばっていたベゴニアに、ナイフが刺さる。
「めんどくせぇ」
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