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「なので、ご無礼をお許しください。ご主人様」
セバスは、暴れるルルキアの頬を手のひらで強くーーパシンッと叩いた。
「っ……」
「落ち着きましたか?ご主人様」
熱を帯びて、少し赤く染まってしまった自分の頬に手を当てるルルキア。まさか叩かれるなんて思ってなかったのか、驚いたように目を見開いてセバスを見つめている。
「お前……」
「ご無礼をお許しくださいご主人様。しかし今の状態のご主人様が城へ乗り込めば、確実に殺されてしまいます。行くとしても、せめて傷を治してください。お願いいたします」
冷静さを取り戻したルルキアに安堵の息を漏らしながらも、セバスはすぐさま跪き。頭を下げながら自分の提案を聞き入れてもらえるよう懇願した。
「……」
「……」
一時の静寂が、セバスの頬に一粒の汗を流す。
命令無視どころか、手を上げた罰はきっと重い。もしかするとこのまま消される可能性だってある。
けれどそれ以上に、これ以上ルルキアに傷を負わしたくない。だからせめてこの自分の願いを聞き入れてほしいと、セバスは頭を下げたまま返事を待つ。
しかしいくら待っても、ルルキアはセバスに何も言わない。手を出そうともしない。
「ご主人……様?」
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