私はあなたを見守る

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* シャンデリアが並ぶ大きなお城の中。そこでは華やかなドレスを身に纏った女性達と、燕尾服を着た男性達が手を取り合い。まるで咲き乱れる花の様にクルクルと踊りあう。 仮面をつけた男女は、お互いの素顔を知らない。 けれど今日限りの特別な時間というのは、男女の恋心を揺れ動かし。触れた指先から感じた熱に確かな愛を感じ合う。 「そしてそこをつけ狙う!今度こそ愛のキスをして、この魔法を解いてもらうのよ!」 「成程。それが目的だったのか。このクソ姫は」 ルルキアの魔法で一時的に人間の姿へと戻ったミシェルカは、昔と変わらず美しい姿だった。 しかしそのかわり中身もそのまま。いや寧ろ獣になってから余計酷くなっている気がする。 「それにしても。やはり人間の私はとても美しいわね。一時的とは言わずにずっとこの姿にすることは出来ないの?」 「出来ませんね。今でも結構辛いんですよ?魔法に魔法を上乗せしてる状態なんですから。しかも姿形を変える系は、相当魔力使うし」 だからなのかルルキアは、普段使わない杖を今回の魔法には使っていた。 きっと魔法使いにとっては大事な代物だと思う木製の長い杖。その長さは丁度足から腰ぐらいまであって、頭の部分には緑色の宝石が付いている。 それがいい支えになるのだろう。疲れてフラフラになった自分の身体を杖で支えている。その姿はまるで、腰の曲がったお婆ちゃんだ。 ルルキアの哀れな姿にミシェルカは溜息を零しながらも、不安の色を見せている。 「ねぇちょっと。貴女大丈夫なの?死んだ目が、いつもよりも死んでるわよ?」 「まぁとりあえず平気ですよ。こちとら百年以上も魔女やってんですから。このくらい……」 「そう?ならいいのだけど。因みに、この姿はいつまで持つのかしら?」 「三十分」 「は?」 「いや、だから三十分ですって」 長い睫毛を何度もパチパチさせながら、ルルキアの言葉を聞き返すミシェルカ。 だがその後すぐに言葉の意味を理解したのか。切羽詰まった顔でルルキアの胸倉を掴み取り、思いっきり前後に揺らしはじめた。
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