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片思いと、幸福な日々
「さて。では行きましょうか。ルルキア」
「ここではルルと呼んでくださいな姫さん。私も結構な有名人なんで、人間達にバレると困るんですよ」
「じゃあ私の事は、ルカと呼びなさい」
「はいはい。承知しましたルカ様」
舞踏会まではかぼちゃの馬車。というわけにもいかず。ルルキアの魔法で一気に飛んで来た二人は、あらかじめ用意していた偽物のチケットを渡して颯爽と中へ入り込む。
仮面をつけているおかげで、誰も彼女達の正体には気づいていない。
しかしそれでも、美人オーラというのは溢れ出てしまうものなのか。彼女達を横切る男性達は皆二度振り返り。ミシェルカに目を奪われていた。
そんな状況に、ルルキアだけが不満そうに唇を尖らせている。
「うわぁ……もう早速帰りたくなってきましたわ。というか、ルカ様の隣に立ちたくない」
「急になに?失礼ね」
「いやだってさ、今の私ってただの引き立たせ役なんですよ?居づらいわぁ~帰りたいわぁ~」
「馬鹿ね。貴女も十分可愛いじゃない?黒いドレスなんてきっと貴女しか似合わないわ」
「お世辞を言うか、蔑むか、どちらかにしてもらえませんかね?」
「普通に褒めただけなんだけれど……どうして貴女はそう卑屈になるのかしら?」
「ははは。そりゃ今まで私を可愛いなんて言ってきた奴なんていませんでしたからね?そう簡単に信じるわけないでしょ?」
実際、ドレス姿の自分を鏡で見たルルキアの感想は「ドレスに着せられている感が凄い」だった。
せめてこのくるくるになった髪をどうにかすれば、まだマシになったかもしれないが。自分の事にまで魔法を使う力は残っていなかったせいで、自身の身だしなみは全然整えられていない。
もし褒めるところがあるとするならば、それはこのドレスだけ。
ーーきっと今一番醜いのは私だ。
ルルキアはそう思ってならなかった。
舞踏会に来ない手もあったが。もしミシェルカに何かあった時の事を考えると、着いていくのが一番最適だった。
別に、他の人間からどうこう思われるのは構わない。
けれど、そんな惨めな姿を彼女に見せるのが辛い。自分と一緒に居るせいで、彼女にも被害がいってしまうのが怖い。
ーー私は、彼女の隣に立つべきではない。
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