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私はあなたの愛を信じない
ゼラニウム王国。そこは、東大陸にある一番栄えた国。
ミシェルカが、姫として生まれた場所である。
しかし。獣の姿になって両親に追い出されてしまってからは、生まれ育った地に一度も足を踏み入れることは無かった。いや、もう踏み入れることも無いと思っていた。
けれどミシェルカは再び戻ってきた。無理矢理戻されてしまった。
未だその姿は変わらず、獣のままだというのに。
「どうしてこの私を、再びここへ呼び戻したのですか?お父様、お母様」
兵士二人に挟まれたまま、自分の父親と母親が鎮座する玉座の前へと連れて来られたミシェルカ。身体のサイズに合っていない白いドレスの裾を軽く上げて挨拶を済ませると、強めの口調で両親二人に問いただした。
昨夜ルルキアの手当を済ませ。薔薇の執事とかいう不思議な男性と二人で静かな夜を過ごしていた時、その人は突然訪れた。
「こんばんわ。私はゼラニウム王国の者です。ミシェルカ姫をお迎えにあがりました」
「私を?」
「はい」
最初は何かの罠じゃないかと、ミシェルカは疑った。
大体ルルキアが知らない男に襲われたばかりで、それからすぐに国からのお迎えだなんてどう考えてもおかしい。
このまま着いて行けば、今度は自分が殺されるかもしれない。
そう可能性も考慮して、ミシェルカは側に執事を忍ばせ。すぐにでも攻撃できる体勢を整えていた。
だが。兵士の口からある人物の名前を出された瞬間。心が揺らいだ。
「レヒト王子もお待ちしております」
「……レヒト、王子……が?」
「……ミシェルカ様?どうされましたか?」
執事の言葉にも反応せず。ミシェルカは俯いたまま考え込む。
「ミシェルカ姫」
「ミシェルカ様?」
二人の男が、手を伸ばす。
考えた末に、ミシェルカが選んだのはーー。
「私を、城へ連れて行って」
兵士の手だった。
そして今現在、ミシェルカは両親の目の前で立たされている。
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