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愛の後悔
「お戻りください。ご主人様」
「煩い!離せ!クソ薔薇野郎!」
玄関先でもみ合う薔薇の執事セバスと、魔女ルルキア。
その光景は、拗ねて暴れる子供の服を捕まえて、無理矢理家へ帰ろうとする親のようにも見えるが。二人から漂う空気は、そんなお買い物中の親子のような穏やかなものではない。
「ご主人様。まずはその怪我を治す方が先です」
「黙れ役立たず。だいたいお前がミシェルカを引き止めなかったから、こんなことになってんだろうが!」
あれから何が起きたのかを問いただし。セバスから全て話を聞いたルルキアは、未だ傷が完治していないにも関わらず。ミシェルカを連れ戻すため城を飛び出そうとしていた。だが、そこでセバスが止めに入ったのだ。
「一度落ち着いてください」
「黙れ!!いいから離せ!!」
暴れながら何度も何度も離せと命令しても、セバスは外へ出ていこうとするルルキアの腕を離そうとはしない。
セバスにとって、ルルキアは命をくれた恩人であり。今ではルルキアを守る執事だ。
だから彼女が無茶をしようものなら、命令を無視してでも止めに入るのが、彼の今の役割。
ただ、ご主人様の身体を第一に考え。動く。
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