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誠実な深い愛情
そこは、冷たくて薄暗い。石の壁。
日の光も当たらない。誰の声も聞こえない。
「まるで監獄ね」
ミシェルカは、閉ざされた扉の前で座り込んだまま。ただ乾いた笑みを浮かべた。
どうやってここに来たのか分からない。
ただ、気が付いたらここにいた。
分かる事は二つ。
ーーこれはレヒト王子の仕業で。
そして彼は。
「人間じゃない」
「何を言っているのですかミシェルカ姫。こんな僕はまだまだただの人間ですよ」
扉の向こうから聞こえるのは、レヒト王子の声。
ミシェルカは立ち上がって、声の主を殴るように拳を扉に叩きつけた。
しかし、それでも扉は傷一つ付く事無く。ただ周りの壁に振動が伝わっていくだけ。
「貴方は、一体何を考えているの?」
悔しさと、無念が、ミシェルカの脚を折る。
その向こうで、レヒト王子は変わらない笑みを浮かべたまま。壁にもたれかかって、ミシェルカの問いに答えた。
嘘偽りのない、真実を。
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