誠実な深い愛情

1/16
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ

誠実な深い愛情

そこは、冷たくて薄暗い。石の壁。 日の光も当たらない。誰の声も聞こえない。 「まるで監獄ね」 ミシェルカは、閉ざされた扉の前で座り込んだまま。ただ乾いた笑みを浮かべた。 どうやってここに来たのか分からない。 ただ、気が付いたらここにいた。 分かる事は二つ。 ーーこれはレヒト王子の仕業で。 そして彼は。 「人間じゃない」 「何を言っているのですかミシェルカ姫。こんな僕はまだまだただの人間ですよ」 扉の向こうから聞こえるのは、レヒト王子の声。 ミシェルカは立ち上がって、声の主を殴るように拳を扉に叩きつけた。 しかし、それでも扉は傷一つ付く事無く。ただ周りの壁に振動が伝わっていくだけ。 「貴方は、一体何を考えているの?」 悔しさと、無念が、ミシェルカの脚を折る。 その向こうで、レヒト王子は変わらない笑みを浮かべたまま。壁にもたれかかって、ミシェルカの問いに答えた。 嘘偽りのない、真実を。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!