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それでは、最後のアレをやってしまうとするか。――――新入生、起立!」
ほぐれていた表情を一気に引き締めた西條の号令で、一真ら新入生たちが一斉に立ち上がった。そして、全員の口から宣誓の言葉が紡ぎ出される。
「『我らは祖国を護りし盾となり、仇敵を撃ち滅ぼせし剣とならん。この身を等しく祖国の礎とし、見敵必殺の志の元、我が身朽ち果てるまで未来の為戦う武士とならんことを、ここに誓う』」
左胸に拳を当て、各々が一字一句違うことなく記憶した誓いの言葉を、ここに集いし訓練生たちはそれぞれの想いを胸に暗唱する。それは一真も、瀬那とて同じことだった。
ここまでやって来ては、もう後戻りは出来ない。無力な一般人としてではなく、一人の戦士として、死ぬまで人類の敵――"幻魔"と戦う運命を辿ることになる。
だが、一真の胸に後悔は無かった。これは、自分で望んだことだ。巨人の姿をした鋼の鎧・TAMSを駆って戦場に赴き、幻魔を一匹残らず狩り尽くすこと。それこそが一真の望みであり、この陸軍京都士官学校へとやってきた理由だった。
(もう、昨日までの無力な俺とは違う)
無力だった弥勒寺一真は昨日、ここの門を潜る前に死んだ。今ここに立つのは武士を志す者の一人、戦士となることを望んだ男・弥勒寺一真だ。
そんな想いを胸に、一真は誓いの言葉を口にする。行き着く先がこの世の地獄になるだろうことは、とうに承知のことだった。
/5 Int.05:軟派な男、名は白井彰
式が終わり、新入生たちはそれぞれの教室に案内された。
士官学校が徴用している、元・公立高校の四階建て校舎。その三階左端にある教室が、一真たちA組に割り当てられた教室だ。
「よっ……と」
前方の黒板に貼られた席配置の指示表を見てから、一真は窓際の最後尾から二番目の席に着いた。最後尾といっても並ぶ机の中では真ん中の方なのだが、クラス人数がそもそも少ない故に、実質的に後ろから二番目ということだ。
「ふむ、私は一真の後ろか」
ガラッと椅子を引く音が背中越しに聞こえたかと思えば、スッと席に腰を落ち着かせた瀬那が話しかけてくる。彼女に割り当てられた席は窓際最後尾、つまり一真の真後ろだ。
「みたいだな」瀬那の方へ振り返りながら、一真が返す。
「ところで……随分と、数が少ないのだな」
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