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スッと教室に顔を出した西條教官に手招きされ、瀬那は「すまない、白井。それに一真も。教官殿が呼んでいる故、話はまた後にしてくれ」と言って席を立ってしまった。
「ありゃ、残念」
消えていく瀬那の背中を見送りながら、白井が肩を落とす。
「ところでよ、弥勒寺……ってのはちょっとよそよそしいな。一真でいい?」
構わない、と一真は答える。すると白井は一真の耳元に顔を寄せ、内緒話をする見たく囁く。
「お前さ、綾崎どう思うよ?」
「どうって……」
突拍子も無い白井の囁きに、なんと答えて良いか分からず口ごもる一真。
「今のところは単なるクラスメイトで、ルームメイトだけど」
「だよなあ……――――ってお前、今なんつった!?」
「何って、瀬那のことだろ? クラスメイト……」
「違うその後!」
「……ルームメイト?」
そう、それ! と血相を変えて白井が詰め寄ってくる。
「一真よ、一つ訊いてもいいか?」
「あ、ああ……」
「自宅通学なのか? 俺は実家からだけど」
いや、と一真は否定する。「訓練生寮に下宿してるけど」
「それともう一つ、綾崎も寮に下宿か?」
真顔で訊いてくる白井に、一真は黙って頷いて肯定してやった。
「…………ってことは、だ。ルームメイトつってたよな? つまり、お前と綾崎とは……」
「……同じ部屋で、暮らしてるな」
大体先が読めてきた一真が苦笑いをしながらそう呟くと、白井は「かぁーっ!」と頭を抱える。
「ああくそ! 羨ましすぎんだろ畜生っ!」
「羨ましいもんなのか?」
「羨ましいに決まってるだろ!?」やかましい程の顔で更に詰め寄る白井。「お前、あんな綺麗な娘と同室だぞ!?」
「あー、瀬那が綺麗だってのは認めるけど」
……出逢って早々斬りかかられちゃあ、そうも言ってられなかったんだよな。
胸の内でひとりごちつつ、「あーくそっ! やっぱ俺も寮入っとけば良かったぁー!」なんて地団駄を踏んで悔やみ出す白井を、一真はやはり苦笑いしながら遠目に眺める。
「……くそっ、仕方ねえ。同室のアドヴァンテージがデカ過ぎる以上、綾崎はお前に譲るぜ…………」
「譲るって、そもそも取り合ってたつもりは無いんだけど」
「うるせえ! ――――だが! 幸いにしてこのクラスは女子が多い。しかぁも! レベルはかなり高いと来た……。見てみろ、一真」
白井は強引に一真の首を捻ると、教室の真ん中の方へと視線を向かせる。
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