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――――だが、どの道であろうと、諸君らは等しく我が軍の、ひいては地球人類にとって最も貴重な人材であり、そして最も重い責務を負う立場でもある。我々人類の行く末を担うのは、他ならぬ諸君らの双肩に懸かっていると言っても過言ではない」
偶然にも一真の臨席だった瀬那も、真剣な眼差しで壇上に立つ西條の言葉へ耳を傾けている。
「無論、諸君らにも相応の期待と責任を背負って貰うことになる。それを重荷に感じ、押し潰されそうになることもいずれはあるだろう。
――――しかし、押し潰されて貰っては困る。徴兵か、志願か。動機が何であろうと関係ない。ここの門を叩き訓練生となった以上、君らには一人たりとも欠けること無く、立派な武士となって貰わねばならん」
バンッ、と西條が目の前の演台に両手を叩き付ける。突然の激しい音にビクッとした連中が、何人か驚いて身体を震わせるのが見えた。
「いいか、これだけは言っておく。――――我々に、降伏は無い。我らの敵が物言わぬ侵略者である以上、我々地球人類に残された道は二つのみ。勝利か、死かのみだ。
……出来ることなら、私の教え子たちには一人も死んで欲しくはない。しかし、これは戦争だ。互いの種の存亡を賭けた絶滅戦争である以上、死は避けられぬファクターだ。
だからこそ、私は諸君に言っておきたい。諸君らがこれからどのように戦い、そして死んでいくとしても。我々に提示される選択肢に、降伏の文字はあり得ない」
――――降伏は無い。
その言葉の重みが分かってか分からずか、集められた新入生たちは一様に緊張した面持ちでいた。それは一真も、そして隣の瀬那も変わらない。敵が起源不明・コミュニケーション不可能の敵性生命体である以上、降伏はあり得ないのだ。相手は人間じゃない、人間よりも、もっとずっと厄介な敵なのだから……。
「……とまあ、少々脅しすぎたか。そう気負う必要は無い。よっぽど戦況が劣勢にひっくり返って、京都が戦場にでもならない限り、ここを卒業するまで諸君らに実戦の機会が与えられることは無いだろう。確約は出来ないが、しかしひとまずは安心してくれて構わない」
雰囲気を解すように西條が言葉を付け足すと、新入生たちの間に張り詰めていた妙な緊張の糸がホッと和らいでいく。
「この辺りで、私からの言葉は終わりとしよう。そろそろ時間も押してきているみたいだからな……。
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