第1話

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そしてその途中で、ちょっとした事件に遭遇した。 コンビニでコーヒーを選んで、ロボットが居座るカウンターへ向かう。 顔は四角い液晶画面で、そこに、どこかで見たアニメのキャラクターのような顔で表情豊かに接客してきた。 「いらっしゃいませ。これはどうも!初めていらっしゃった客さんですね!」 俺は、無表情でコーヒーを差し出すと、ロボットのカメラは俺の顔を1秒ほど捉える。 俺はスマートフォンで素早く決済して、そのコーヒーをひったくった。 「おい!今、俺の顔記憶したろう?消しとけよ!」 「かしこまりました。」 ここ数年で、急にロボット化の波が押し寄せた。コンビニのロボットが初めて置かれたときは、大したものも買わないのに、わざわざ1号へ店行って並んだものだ。 しかし、モニタに映される かわいらしい表情は嘘っぽいし、なにより自分の顔を勝手に覚えられてしまう事が俺には腹立たしい。 「ケッ。ホントかよ。」 今やロボットさえ、嘘も方便だ。 コンビニを出るや否や少し離れた歩道から怒鳴り声が聞こえる。 「おい!それは、俺の財布だって言ってるだろう!」 首元にタトゥーが見えるサングラスの男が、掃除ロボットに絡んでいる。 「身分証明書がありません。顔認識情報に登録がありません。センターへ問い合わせ中です・・・」
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