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薙紗は、龍神を鎮め、その託宣を受けるための器………いわゆる<御柱>として聖宮に差し出されるはずの清き身の上だった。
聖宮の御柱については、一般には多くが謎に包まれている。ただ、十年に一度ごとに新たな者が選ばれて、外界から隔絶された聖宮の中で十年間、龍神のみに仕えて生きるのだという、その程度しか周知されていない。祀るということの本来の意味は、聖宮に入った者のみが知り得ることだ。
御柱に選ばれる者は男女定まってはいないが、必ず見目が良く、先天的、身体的になにかしら、常人と異なる非凡な特徴を持つ者が選ばれるのだという。
その巷説が真実だとするならば、薙紗には、選ばれるだけの素質が確かにあった。
不自然な身体的特徴と、それゆえに慎ましく暮らしてきたからこそ自然に備わった、嫋やかな所作と性格。
その特徴ゆえの体の弱さから、<家>の敷地からほとんど外へは出ることなく、他人の悪意に晒されることもなく育ってきたのだ。まさに心身ともに穢れを知らぬ、聖人と呼ぶに相応しき人間だった。
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