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中途半端な体に生まれついた薙紗は、当然病気がちでもあった。正妻はそんな末子を箱入りで育てた。見た目の可愛らしさからか、女児の服を着せることもあった。こうなったら女として育ててしまおうか、ということなのか、髪も切らずに伸ばさせて時には結った。世話をするのは相変わらず苦手のようだったが、彼女も彼女なりに薙紗を愛してはいたのだろう。
薙紗のほうも、気まぐれで気性の浮き沈みの激しい母を、さほど嫌ってはいなかった。母の自分への優しさと鴉への「悪意」は、背反するものであったのに、薙紗はそうした母の二面性を猜疑できるほど精神的にも熟していなかったからだ。
薙紗は修学することもままならず、親しい友といえば飼い猫や栗鼠、という環境で育った。
世間のものごとを知らず、反対に世間にも己の存在を知られることのないまま、生きてきたのである。
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