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「光太ぁ!」
走り出すや、神助はつんのめった。見ると、誰かの手が足を掴んでいる。足蹴にするように手を振り払って走り出すが、何人かが自分を追ってくる気配が伝わってくる。
「ぎゃー」
「光太ぁ!」
群れの中から光太の叫び声が聞こえ、神助は走り寄ると力任せに光太に群がる人間たちをかき分けた。
そこには、頬を噛みちぎられ、腕や喉に食いつかれた光太がいた。
神助は、光太に肩を貸すように担ぎ上げると、やみくもにスペースが空いている方へ走った。脚にしがみついてくる者、飛びかかってくる者、とにかく出口へ走るしかない。
ランナーとして持久力や走力には自信のある神助だが、光太を担ぎながらの走りでは、思うようにスピードを上げられない。
改札が見えてきた! この場から抜けられる、そう神助が思ったとき、
「うわっ」
神助は、光太共々つんのめり、したたかに顎を床に打ち付けた。
一瞬、脳震盪のようになったが、目の前に投げ出された光太に、何人かが群がろうとしている。起き上がろうとするも、何者かが足首を掴んでいる。
「ぐわっ」
その足首に激痛が走り、血が滴った。
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