第2話 託サレル

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神助の目は怒りに燃え、その影も炎のように揺らめいて見えた。神助は、自分にとりつく三人をめちゃくちゃに殴り、振り回し、ベンチの折れた脚を光太を襲う一人の足から引き抜くと、その背中に深々と突き刺した。 「ぎええええ!」 神助は、光太を担ぎ上げ、改札に向かって走る。もはや走るというより、転び出るといった体で改札へ向け突っ走った。これ以上追われれば逃げ延びられない。後ろで、ゾンビのような人間達がのそりと起き上がる気配がする。 しかし、改札を抜けた途端、追ってきていた人間達はそれ以上追ってこず、のそのそと駅の内側に戻って行った。 「はあ……はあ……」 血の吹き出した肩で息をしながら、後ずさるように、改札から離れた神助は、改札内に、でっぷりと太った、巨大な人影のようなものが揺らめいているのを見た気がした。  × × × 駐車場で銃声が鳴り響いた。 都会の騒めきの中でも、それはかなりの大きさで鳴り響いたが、銃声等聞いたこともない人々にとっては、車のバックファイヤーとして認識された。 神助の父である、天祐啓示の撃たれた腕からアタッシェケースが落ち、中に納まっていた球体がばらばらと床に散らばった。 啓示は、血があふれ出す腕を押えながら、必死で車の陰へと身を潜めた。 腕が熱い。 痛くて、痛くて、気が変になりそうだ。 「天祐博士、腕を撃たれて逃げるなんて無茶しちゃいけません」 警察にしては怪しすぎ、民間の警備員にしては隙がなさすぎる黒づくめの男が、足音も立てずに歩いてくる。 「あなたの脳はできるだけ利用したいそうなんで。出てきてください。今ならまだ間に合いますよ?」 そう、まだだ。まだ間に合う。 全部を拾うことができなくても。 「ああ、こんなに散らばして。これは絶対回収って言われてるんでね」 男は、しゃがむと散らばった球体(キューブ)を拾いだした。途端、エンジンがうなり、男に車が突っ込んでくる。 「!」 男は咄嗟に車をよけると、大きな銃声がしたが、車はゴムが焦げるような匂いを残し走り去った。 「天祐センセ、いけませんよ。そんな状態で逃げちゃ」 × × ×
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