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気付けば、パジャマでベッドの中だった。
今、何時だ? 今日は何日だ?
神助は、朦朧とする意識の中、スマホを見た。土曜の午前7時。
何で、部活が終わってから、半日以上経ってるんだ? 何でベッドにいるんだ?
昨日、光太とコンビニに寄って、人が溢れていて……それから? 幾ら記憶をたどろうとしても、神助には全く思いだせなかった。あれから一体何が起こったんだ? どうやって帰って来た? 僕は、何をした?
「おはよ」
二階の居間に上がっていくと、家族全員がはっとした顔で神助を見、次の瞬間、母と弟は、さっと目をそらした。
犯罪者を見るような目で見られて、自分の方がぎょっとする。
「え、何……」
「神助、今日は車で送るから、早く支度しなさい」
何か聞くことは許さないとでもいうような父の鋭い言葉と、神助を避けるように、1階へと降りて行った母と弟の姿に、神助はそれ以上、昨晩何があったのか、自分はどうしたのかも聞けず、家を出るしかなかった。
× × ×
学校に着くと事態は家よりも悪かった。
門を入るなり、神助の周りがわっと開け、モーゼが波を分けて進むように人の波が神助をよけて開いた。
「ほら、1年の天祐……」
「昨日、新宿駅で」「駅前の暴動でも」
避けはするが、目の端に神助を捉えられる位置で、自分のことをささやいているのが否が応でも聞こえてくる。
(何だ、僕が何したって言うんだ……)
コンビニで人が溢れかえっていて、光太と二人出るに出られず困っていて……あれから何があったのか、早く光太に聞かねば、とクラスに入ると、全員が一瞬はっと神助を見、すぐさまさっと目をそらした。それは、今朝の母と弟と全く同じ目だった。
「こ、光太」
神助は、人の輪の中心にいる光太を見つけ近づくと、あっという間に光太と自分の周りから人がいなくなった。
「なあ、どういうこと? 昨日、コンビニで何があったんだよ?」
× × ×
「……光太も、無理して一緒にいなくていいよ」
「何言ってんだよ。神助がいなかったら、俺、逃げ出せなくて巻き込まれてたっつーの」
「だけど……朝も夕方も僕のいたところで変な事件が起きて、一人だけ何ともないのは事実だ」
「たまたまだろ。それに、神助は被害者じゃん」
チャイムが鳴り、皆、席に着いたが、一番後ろの席とはいえ、神助の席だけが、周囲から引き離されていた。
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