彼女のための記憶戦争

１

運命という概念が存在する世界において、選択肢というのは非常に少ない。これが試験であればどんなに良かったか。もしも選択肢が「ア」と「イ」であれば少なくとも、二分の一で当たるのだからこんなにも嬉しいことはない。それでも外すある意味での天才も、割とごく頻繁にいるのだが。

　しかしだ。人生における――というと、多少なりとも話が大きくなって聞こえる(とはいえ始めに『世界において』と言ってしまってからでは話が大きくは聞こえないのかもしれない)が……まあ。人生における選択肢は多い方が良いと思う人は、世界の総人口の九割以上を占めていると思う。職業選択の幅は広ければ広いだけ良いし、お金を何に使うかも自由だ。

　けれど運命とは絶対的だ。むしろ絶対敵とも言える。

　例題である。

Q１(キューイチ)：運命という概念が存在する世界において、彼女は記憶を失くすでしょうか？

　この場合、選択肢は二つと思われがちだが、よく考えてみよう。