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 私立御影沢高等学校(しりつみかげざわこうとうがっこう)  僕と蝶留(ちょうり)が通学するこの場所は、正式名称をそういった。  僕らの名前は親から貰ったわけではない――親は居ない。だからといって別に孤児ではなく、僕らはそれぞれ、僕はこの世界では“静騎(しずき)”として、彼女はこの世界では“蝶留”として、何処からともなく発生していた。戸籍もあった。唯一他の学生らと異なる点があったとすれば、親が居なく家が無いことくらいだろう。世間一般的にはそれを孤児と呼ぶのだろうが。  僕らはそれらが何度目かとか、考えることも馬鹿馬鹿しくて――いや億劫で、憂鬱でしかなくて、何をしたらまた死んで何かに転生するのだろうかとかも別に思わず。 「あ、また転生した」  と、二人で呟いた。僕と蝶留の二人で。  意識が戻って新しい身体になって、すぐにその地の言葉を話せることが、それだけが、未だに気色悪いことこの上ない。自己嫌悪に限りなく近い憎悪だった。    え、何々?小凪?愛也?泉火?そいつらはまだ出てこないぜ。此処は時系列がめちゃくちゃだからさ、とりあえず気にしないで欲しい。
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