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 衣替えをし(残念ながら本校指定の制服のシャツには半袖という選択肢がないので、ブレザーを脱いで長袖のシャツを腕捲りするだけなのだが)、今日もごく一般的な生徒として学校に向かう。  何処から?勿論、魔導書から。  僕らは魔導書の中に居て、魔導書を寝床とする――再度言うけれど、僕らは別に特別な力をもっているわけではない。魔導書を所持し、その魔導書が特別な力を持っているというだけだ。  魔導書は所持者を吸収する――又は休息させる。所持者を本体内に取り込んで休ませ、その上で魔導書自身の休息のために姿を消す。所持者が目を覚ませば魔導書も出現し、所持者を放出し、やがて所持者の内側へ――魂へ収まる。所持者が死んだ暁には、所持者を吸収してまた発生させるのだと。そうやって仕組みが出来ている。  面白いだろ?これぞ自然の摂理ならぬ魔導書の摂理ってヤツだぜ。  つまり冒頭の「何処からともなく…」っていうのは些か嘘になるな。 しかし実際、発生した時のことは覚えていないのだから、やはり「何処からともなく」という表現が適切なのだ。
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