プロローグ『13番目のチャンネル』

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──20XX年 2月15日午後12時15分 月イチのミーティング。 『彼ら』は、時間通りには決して集まらない。 自己主張が強いのか、はたまた社会性が失われているのか。 忙しいのか、やる気がないのか。 いつだって烏合の衆なんてそんなものだ。 そんな事情も露知らず、一人のスーツ姿の男。 宗像晴臣は、少し緊張した面持ちで敷地を跨ごうとしていた。 場所は東京池袋。 名物の駅前西口公園は数年前に打ち壊され、今や巨大な円形のビルがそびえ立っている。 地上31階建て。 スカイツリーに匹敵するこのビルの名称は『東京第一動画配信ビル』と呼ばれている。 通称『ミービル』と呼ばれるこのビルだが、一部の人間からは『サーカス』と揶揄されていた。 一般的に解放されているのは10階まで。 ビルの周りには草木が生い茂り、イスも設置されている。 日曜日になればB級グルメフェアなどの催し物で人がごった返していたこの場所は、今や住民の憩いの場所……にはなっていない。 中国人たちが露店を開いているのを、警察官が見回りに来る。 日本も治安が悪くなったものだ、と近隣住民は迷惑がっていることだろう。
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