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故に人類は、生きる為、戦う為、そして勝つ為に金属機械による既存の兵器をより発展させていった。
歩兵の火器はより強力に、戦車はより堅牢に、航空機はより強靭に。機械兵器は全てを焼き尽くす為に急速に進化した。
最も進化を遂げたのは戦車だ。用途に応じて様々な戦車が開発されていった。地上戦の要となる兵器。
だが、履帯(無限軌道)であるが故に、山岳地帯、熱帯雨林での走行性能、走破性能が劣悪である事が往々にして露呈してしまったのだ。さらに、市街地戦においても、その肥大化した火力が仇となり、取り回しが極端に悪く、かといって歩兵や軽装甲車では火力不足・決定打に欠けてしまう。
そこで開発用されたのが『多脚型歩行戦車』。新型の機動兵器『Walker-War-Car』の台頭だ。
戦車をTankではなくWar・Carと名付ける辺りに開発者の拘りを感じさせる。歩行者と掛けたのだろうか。略語は『WWC』とし、読みは『ウォーカー』だ。
WWCはその名の通り複数の可動脚をもって機動する兵器であり、その脚部の上に別途駆動する砲塔(従来の戦車における砲塔部という意味であり、実際に砲は搭載されていない)と規格統一された人型の“腕部”を持つ。この砲塔は非公式ながら『上半身』と呼ばれ、見た目は人間の上半身のように見えなくもない。全高はメーカーによって多少異なるが、おおよそ五メートルに収まる。
また、特殊な場合を除いてWWCは基本的に四脚が主流である。ただし、一般的な脊椎動物のような『四つん這い』ではなく腰部から放射状に複数の脚が広がり、その中心点に上半身が垂直に載せられる形状なので、地球上のどの生物にも該当しない独特の外観をしている。例えるなら、蜘蛛に近い外観だとも言えなくも無いが、やはりそれと比べても異質だろう。ウォーカー・ウォー・カーはウォーカー・ウォー・カーとしか形容は出来なかった。
結果的にWWCの開発は成功だったと言っても過言では無いだろう。多脚歩行故の走破性の高さと、腕部による運用可能な兵装の多様化は、履帯型戦車では無し得なかった高い汎用性の獲得に繋がったのだ。ただし、火力や堅牢性は履帯型戦車が一手も二手も先行している。よって履帯型の戦車が全てWWCに置き換わることは未来永劫無い。運用方法が目的が違うのだから。
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