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その光景に背中に悪寒を感じてテリー上等兵は戦慄した。夕闇に沈む太陽の位置が高い。咄嗟に高度計を確認。海抜二三二二メートルという数値を目の当たりにして悪寒が確信へと変わる。この高度で落下して叩き付けられたら、まず助からない。
万が一助かったとしても――テリー上等兵の視線が右へと動く。この、“これ”だ。ククルカンの巨体が大地に叩き付けられた余波だけで軽く数十回は死ねる。
一瞬の思考停止。その間にも落下は止まらない。あっという間にもう地面が見える。いや、地面ではない。下は水だ――海? いや、違う。立地的に考えればキブ湖かタンガニーカ湖か。いや、キブ湖か。
キブ湖は大地溝帯の一部であり、アフリカ大湖沼の一つである。コンゴとルワンダの国境線でもある。巨大さではアフリカ最大のヴィクトリア湖やそれに次ぐタンガニーカ湖よりも小さいが、充分大きな湖だ。
湖面が目前に迫る。ああ、死んだな。レイル兵長とテリー上等兵は本日二回目の死に直面していた。地面だろうが水面だろうが、この速度で衝突すれば結果は同じだ。
全く、今日は何て日だ。余りにも目まぐるしい状況の変化に脳の処理が追い付いていないのか、二人は存外冷静だった。
そして、間も無くその時が来る。湖面へと激突――が、そうはならなかった。落下による浮遊感が突然横殴りの“G”に変わったのだ。
ユウだ。一緒に巻き添えになった分身体ユウがジェット機のような翼を広げ、車体を掴みながら超高速で飛行していた。
急激な進行方向の変化により、落下による機体損壊こそは免れたが車内で揉みくちゃになる二人。それでいて全く怪我をしていないのが奇跡的だ。
と、いきなり地響きが響き渡る。ククルカンが大地に平伏したのだ。ただ、接地しただけで、轟音が周囲に鳴り響いた。
キブ湖から水柱が上がる。着水したククルカンの一部が湖面を叩き付けたのだ。
暫くレオルガヴァラエリンを担いでいたユウは、ククルカンの被害が落ち着いたのを見計らって着地する。そして、直ぐ様行ったのは状況の整理だ。
一体何が起こった? 本体の存在を間近に感じる。つまり此処はアフリカだ。それは間違い無い。だが、どうやって? ククルカンのフェイジングに巻き込まれた――巻き込まれた? 成る程、ある得る。ククルカン現出の突発性はそれで説明が付く。後は何故アフリカなのかと言う事だが――さっぱり解らん。
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