砂の籠

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砂の籠

 鳥が飛んだ。  私はただ、それをぼんやりと眺めるだけだった。 砂の籠  何の面白みもない話をする。  小さな窓を眺めるだけの日々の話。  読むも読まないも読み手次第だが、ただ、書き手というのか。私が書きたくなった日々をぼんやりと書き連ねるだけの話だ。読むことを決めた諸君は、つまらないことを覚悟して読んでいただきたいと思う。  さて、ここまでを読んだ諸君にはその覚悟があることと仮定して、私は何も気にせずに話を書くことにしよう。  前書きはここまでだ。  私は何もなく生きてきた自信がある。  何も持っていなかったが、何も欠けていなかった。  学生時分の友達は片手の指で足りる程度。容姿は中の下。背丈も中の下。小難しい頭のおかげか成績は中の上、時々上位。その程度の、どこにでもいる平凡な人間。  不足を感じることは特になかった。  家に金は無かったが、金が無いのだと知った時は周囲の人間の家庭環境を知った時だったから、自分の家の生活には既に慣れていたし、よそ様の生活にあこがれるほどの想像力も持っていなかったから、私は至極平穏に生活を全うしたことと思う。     
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